(E-mailでの配信を受けて、「死刑に異議あり!」キャンペーン推進会議の責任で転載します。)

死刑執行に対する抗議声明

2009年7月28日 イエズス会社会司牧センター

 イエズス会社会司牧センターは、2009年7月28日の山地悠紀夫さん(25歳、大阪拘置所)、前上博さん(40歳、大阪拘置所)、陳徳通さん(41歳、東京拘置所)に対する死刑執行に強く抗議します。

 法務大臣 森 英介殿

 本日、山地悠紀夫さん(25歳、大阪拘置所)、前上博さん(40歳、大阪拘置所)、陳徳通さん(41歳、東京拘置所)に死刑が執行されたことに、強く抗議します。昨年は1年間で5回15人、今年も1月に4人に死刑が執行されました。5月に裁判員制度が導入され、死刑に関する議論が高まる中での執行に、強い怒りを覚えます。
 私たちはカトリックの立場から、これまでも一貫して死刑の執行停止を求めてきました。いのちは神から授かったものであり、どんな罪を犯した人も、人の手で殺すことは許されません。どんな犯罪者であっても、悔い改めの機会が奪われてはなりません。また被害者遺族の癒しは、死刑によってではなく、私たちが犯罪被害者への支援に親身に取り組むことによってこそ、もたらされるでしょう。さらに犯罪防止は、死刑よりも十分な犯罪者更生策によってこそ実現されます。
 私たちは、裁判員は市民の大切なつとめだと考えます。私たちが、犯罪を生み出す社会的背景や犯罪者の更生、犯罪被害者の苦しみに思いをめぐらすことなく、罪とその裁きを他人事のように裁判所に任せているかぎり、いくら厳罰化しても犯罪は決して減りません。その意味で裁判員制度は、犯罪と真剣に向き合い、司法と社会のあり方を考える貴重な機会となるでしょう。しかし、死刑制度はまったく逆です。なぜなら死刑は、重大な罪を犯した人を社会から完全に抹消することで、犯罪の背景も犯罪者の更生も、被害者の苦しみでさえ、それ以上考えないようにしようとするからです。私たちは「死刑は何も解決しない」と、改めて訴えたいと思います。
 カトリック教会は毎年春に復活祭を祝います。キリストは罪のない方でありながら、人類すべての罪を背負って死刑にされました。しかし、キリストは神の子として罪と死に打ち勝ち、永遠のいのちへと復活されたのです。カトリックの信仰では、死によって罪を贖(あがな)うことができるのはキリストただ一人です。キリストは自ら死刑にされることによって、すべての人の罪を贖い、「回心して生まれかわりなさい」と教えました。この「どんな罪人でも生まれかわることができる」という信念は、カトリック教会だけでなく、全人類が堅持すべき希望であると、私たちは確信します。
 政府が死刑の執行を一刻も早く停止し、その是非を国民の間で改めて真剣に議論する場を作るよう、切に求めます。