台湾死刑廃止連盟2010年3月12日付プレス・リリース(日本語訳)

 
日付:  金曜日, 2010-03-12
 

台湾死刑廃止連盟が年3月12日付でプレス・リリースを発表

(日本語訳)

 

 死刑廃止のために立ち上がろう

台湾死刑廃止連盟、2010年3月12日

「私は、公に死刑支持を表明する人を非難したことはない。死刑に賛成あるいは反対することは一つの道徳的選択であり、その選択は個人の良心に属するものだからだ。私を腹立たせるのは、知識人の自称死刑廃止主義者が、世論調査で死刑支持が優勢だからという理由だけで、死刑存置に甘んじていることだ」 ―ロベール・バダンテール(フランス法務大臣への公開書簡、1977年)

台湾死刑廃止連盟は、台湾の王清峰法務部長が昨日、口頭で辞意を表明し、呉敦義行政院長と馬英九総統が受理したことを、心から遺憾に思う。

王法務部長は、2008年に法務部長に就任して以来、死刑廃止への支持を表明してきた。台湾が国連の市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約)と、経済的・社会的及び文化的権利に関する国際規約(社会権規約)を批准して以来、王法務部長は一貫して死刑の段階的廃止政策を継続し、死刑事案を検討し、モラトリアム(執行停止)を続けてきた。王法務部長はまた、法務部内に死刑の適用に関して研究する小委員会を設置し、死刑廃止に向けて動いてきた。この小委員会は専門家、死刑制度の研究者、その他の死刑に関係する人々が参加して、死刑に替わる代替案を追究するため、踏み込んだ議論を行うものだ。この問題に関する王法務部長の献身は、大いに賞賛されるべきである。

今年の後半に予定される総選挙を控えて、私たちは総督府と行政院、立法院、与党、野党に対して、死刑という生と死に関する問題よりも、自分たちの利害を優先することのないよう強く要請する。私たちは、行政府と立法府が台湾のとるべき進路を考慮するにあたって、普遍的な人権の諸価値を支持するよう求める。

・国際的な側面-経済を越えて
台湾政府は、世界経済への参加の度合いを増すために、中国との「経済協力枠組協定」(ECFA)をはじめとした、積極的な取り組みを行ってきた。台湾は経済発展に対してはオープンな態度を取っているが、国際人権基準については、いまだに全面的に採り入れていない。台湾は国連加盟国ではないが、このように国際社会から孤立した道を歩むことは許されない。私たちは、国連総会が2007年と2008年に採択した、死刑執行の一時停止を求めるモラトリアム決議を無視することはできないし、世界139ヵ国が死刑を法律上もしくは事実上廃止している事実も無視できない。国連の次回の「死刑に関する5年毎の調査」は、今年の6月に発表される予定だが、その中でウィリアム・シャバス教授は、世界中で死刑が廃止される日が、2015~25年の間に実現するかもしれないと述べている。台湾は、死刑廃止への歩みのスピードを落とすことはあっても、死刑廃止への道を踏み外すことがあってはならない。

・死刑の代替案
我々は、死刑廃止が容易な課題ではないことを理解している。「命には命を」という価値観は私たちの文化に深く根付いているので、広範な議論を通してはじめて変えることができる。したがって、死刑を存置すべきかどうかの議論は、一時(いっとき)の世論のすう勢に基づいて決められるべきでないことは明白である。私たちはしばしば、民主主義とは世論に従うことであると考えがちだが、人権が危機にさらされている時は、公の議論と世論の啓蒙が必要なのだ。

総督と行政院は、「長期的には」死刑を廃止するという目標を表明している。この目標に沿って、段階的な計画を実施しなければならない。死刑の代替案についての議論を続けなければならない。王法務部長が設置した検討小委員会は、死刑の代替案の起草と世論の啓蒙という使命を、継続して果たす必要がある。

・死刑囚と死刑事案の被告人に関する啓蒙
総統と行政院は、法律の修正によって、死刑の適用範囲を徐々に狭めていくという目標を表明している。死刑は取り返しがつかない究極の刑罰であるので、細心の注意を払った適正な法的手続が保障されなければならない。適正な法的手続を保護するため、我々は下記の修正を要求する。

 1、死刑判決には、裁判官の全員一致による評決を必要とすべきである。
2、あらゆる死刑事案の被告について、その事案が最高裁判所に上げられた場合に、法的助言を受けられるようにすべきである。
3、あらゆる死刑事案が最高裁判所に上げられた場合、最高裁判所の法廷は現在、その事案に関して公開の審理を開いていない。最高裁判所はあらゆる死刑事案に関して、検察側と弁護側による口頭弁論を開くべきである。

・次期法務部長
Hsieh Kuo-liang議員が言うように、「44人の人々を処刑することは、虐殺以外のなにものでもない」。私たちは、次期法務部長が死刑囚の処刑という目的のために法務部長の職に就くのでなく、刑事訴訟法と国連の自由権・社会権規約に沿い、細心の注意を払って権限を行使することを望む。台湾死刑廃止連盟は、すべての死刑囚に対して、引き続き法的助言を与えることによって、彼らの上訴権が確保されるよう取り組んでいく予定である。

林 欣怡(LIN Hsin-yi、台湾死刑廃止連盟事務局長)

台湾死刑廃止連盟加盟団体
台湾人権擁護協会、司法改革協会、台北弁護士会、台湾法律家協会、Chang Fo-Chuan人権研究センター、アムネスティ・インターナショナル台湾、ヨハネ・パウロ2世平和研究所、台湾緑の党、台湾チベット青年会議