昨年末の、鳩山元法務大臣の発言について

「私から、これだけ凶悪な(死刑囚が)何百人いるけれども、最も凶悪な
事犯の一つだと思うから、宮崎を執行すべきと思うが検討しろと、私から
指示しました、実は。これは今、初めて言います。私から死刑を執行すべ
きだと。残虐な人間、本当は時系列的にベルトコンベアが正しいんだと私
は思うんだけど、やはり大変凶悪な事件と私なりに記憶してるから、よく
調べて執行したいと思うから、調べろと言いました。」

以上は、昨年末、TBSの特番で放映された、鳩山元法相の発言の一部
である。

この発言に関し、私は記者曰く「当事者」として、取材を受けた。すなわ
ち、私は、宮崎勤氏が執行された2008年6月当時、2ヶ月後には確実
に彼の再審を請求すべく準備中であり、かつ、その旨を正式に法相宛てに
通知済みであった。にもかかわらず、私は、こともあろうに、死刑廃止活
動のために滞在していた台湾において、依頼人の処刑を知ったのであった。

この発言について問い合わせてきた記者は、ひたすら、私の「今の気持ち」
を聞きたがった。しかし、2年半もの間、依頼人を殺されたのは自らの責
任と考え、自分を責め続けてきたものを、突然、執行の真相を聞かされた
からといって、急に怒りの矛先を鳩山氏個人に向けることなど、少なくと
も私には出来なかった。私が取材時に強調したのは、この発言により暴露
された事実が、決して「一人の常軌を逸した法相の行動」という総括に終
わってはならない、ということである。鳩山発言は、彼が何人もの死刑確
定者を飛び越して私の依頼人を処刑したように、死刑とは本来的に恣意的
殺人を許すものであり、かつ、これまでにも数多くの恣意的殺人が行われ
てきたという事実を示すものなのだ。

したがって、法務省は、ただちに、少なくとも1993年以降のすべての
処刑について、誰が、どのような事実に基づいて処刑の対象とされたのか、
関係する全ての情報を明らかにすべきであり、その作業と同時に、死刑
の執行はただちに停止されるべきである ――以上が私の発言要旨である。

どうやら私の上記発言は、報道されなかったもようである。しかし、私が
驚いたのは、鳩山発言自体から死刑制度の持つ本質的問題性を告発する声
が、ほとんどまったく公にまされなかったことである。ゆえに敢えて繰り
返し述べる。鳩山発言は、決して一人の常軌を逸した法相の行動を示した
ものではない。死刑制度の本質を暴露したものなのだ。

「死刑に異議あり!」キャンペーン事務局・田鎖麻衣子